聴導犬の訓練

候補犬選択編

聴導犬の候補犬は、動物愛護センターなどの行政収容施設や動物愛護団体などから選んできます。盲導犬や介助犬と違い、体力を必要とするサポートではないため、体の大きさは特に関係ありません。そのため、現在活躍中の聴導犬の大半が雑種などで血統書のない犬たちなのです。しかし、ユーザーとの社会参加を考えると、踏まれたり、蹴られたりしない程度の大きさは必要となります。

聴導犬の候補犬を選択する時期は、生後2ヶ月~4ヶ月の間としています。音に反応することを自然体で行えるようにするためには、子犬の頃から音に敏感な犬を選ぶのだろうと思われがちですが、必要のないものには鈍感な方が良いのです。

候補犬導入時に行われるテストは、子犬が元々持っている性格を評価していきます。

1.人が好き

どんな人に対しても、友好的に背接することができなければなりません。攻撃的になったり、近づいてくる人に吠えたりするのはダメです。また、触られた時に、体を硬直させたりすることもダメなのです。抱っこされた時にも、人を信頼し全体重を預ける、そんな犬が、聴導犬として人との信頼関係を築いていけるのです。

2.どれだけ人と一緒に居たいか?

聴導犬は、24時間体制でユーザーの側に居ます。ユーザーにいち早く情報を伝えるためには、側に居ることが必要なのです。そのため、訓練で一緒に居ることを覚えるのではなく、側にいたいと思う犬を選ぶことが重要なのです。テスト頭にもよりますが、このテストで90%近くの犬が不合格となります。

3.恐怖心と順応性

人にも怖いと感じる物やことがあるように、犬も同じなのです。犬にとって人間社会は恐怖と感じることや物が多いのです。新しく見たり聞いたりした物を恐怖の対象と捕らえず、犬自身がその物を理解し納得することができるかが重要なのです。また、あたらしい物があったとしても、気にせずスルーすることができるかも重要なのです。スルーできれば、恐怖を感じていないことになります。
そして、恐怖を感じてしまったとしても、順応する(慣れる)力があれば、数回経験しただけで理解し、スルーできるようになります。聴導犬は、社会参加場面において、一般の犬が経験しないようなことを目の当たりにすることがたくさんあり、一々気にしていたのでは、ストレスを抱えるだけになってしまいます。聴導犬として社会参加するためには、ストレスを抱えさせないことも重要となるので、恐怖心の有無と順応性の高低は、候補犬選択の大きな柱となります。

このように、上記にあげたポイントとチェックするためのテストを用意し、候補犬の導入を決めていきます。テスト頭数にもよりますが、10頭テストして1頭も見つからない時もありますし、5頭テストして1頭見つかることもあります。

また、どのテストの時もそうなのですが、100%理想通りの候補犬は居ません。いつも、候補犬として訓練することのできる合格ラインを超える犬を探しているのです。

候補犬の訓練編


候補犬の訓練は、3つの段階に分かれています。

第1段階 訓練士との24時間生活

生後2ヶ月~6ヶ月までの間で、人と一緒に生活するためのマナーや、聴導犬として必要な基礎的なことを身につけていきます。例えば、トイレのマナー。決められた場所で、合図があったらトイレをするようにに教えます。聴導犬として社会参加した場合、ペットのようにいろいろな場所でトイレをすることはできません。他人に不快感を与えないように、どんな場所も汚さない。そのマナーが守れるから、社会に受け入れてもらえるようになるのです。そして、基本的なこととして、犬自身が状況判断することができるように、「考えて行動する」と言うことを覚えさせていきます。聴導犬の場合、音に反応するのは命令ではなく、犬の自己判断となります。そのため、犬自身が考えて行動しなければならないのです。大人になってからではなく、子犬の頃から身につけていないとできないこととなります。

その他にも、座れ・伏せ・落ち着いて歩くなどの基本動作や音に反応するための「音探し」をこの時期に身につけて生きます。


第2段階 社会参加訓練と音の本格訓練

生後7ヶ月~1才過ぎまでの期間は、社会参加するために必要なことを経験させます。例えば、電車・バス・車の乗車訓練を積みます。

また、音に関しては、種類を増やすことや、訓練所ではない場所で反応できるように訓練していきます。
第1段階から第2段階へ進む際には、聴導犬として継続できるか再評価を行い、継続できない場合は、PR犬へチェンジするか、一般家庭へ譲渡するかのどちらかとなります。

第2段階終了後、聴導犬の最終評価を行い、どのような環境の聴導犬希望者に適しているのか決断していきます。


第3段階 希望者に合わせた法的訓練及び合同訓練

第2段階終了後に決定した希望者の状況にあわせた訓練を始めます。基礎訓練は60日以上、聴導動作訓練は100日以上の日数をかけ行います。

基礎訓練に関しては、希望者の状況に基づいて、聴導犬への指示を手での合図か、声の合図かどちらかにします。また、生活環境内での訓練を行い、日頃の活動範囲内での乗車訓練や社会参加訓練を行っていきます。

聴導動作訓練に関しては、希望者の家庭内で発生する音を使い、反応できるようにしていきます。
第3段階の訓練は、ユーザーとなる希望者の生活を基本に考え、合同訓練終了後すぐに生活できるようにしていく訓練なのです。

最後の合同訓練は、ユーザーとなる希望者に対して、聴導犬が指示に従うようにしたり、音に反応して伝えられるようにしたりする訓練です。希望者と犬がセットとなり、訓練士から指導を受けます。

希望者は犬とのコミュニケーションの取り方や、社会参加場面での対応方法とマナー、日常の管理や犬の病気について、公衆衛生に基づく予防等を学びます。候補犬は、希望者の指示を読取、その支持に従うことを覚え、音に反応して希望者に伝えることを行っていきます。

聴導犬の認定とその後編

合同訓練終了後、総合評価を受け認定試験の申請をします。希望者に関する書類、候補犬の健康状態を記載した書類、訓練経過報告に関する書類を提出し、書類審査が行われます。その後、聴導犬として適性があり、仕事ができるかどうか、希望者が候補犬をコントロールできるか等を、動作検証をしていきます。

そして、認定審査会にかけられ、聴導犬として認定されることになるのです。
認定されると、ユーザーと聴導犬の写真が入った認定書と、健康管理手帳、聴導犬が身につける表示が渡されます。社会参加する際に、ユーザーはこの3点を所持する義務があり、提示を求められたら見せなければならないのです。所持していなければ、ペットとみなされ聴導犬と共に社会参加することは出来ません。

聴導犬として認定されるのは、2歳前後となり引退までの8年間、ユーザーと共に生活します。 ただし、訓練は認定されて終わりではなく、生活が変化した場合や、何らかの問題が発生した場合には、再訓練を行うことになります。また、協会は継続的にユーザーと聴導犬の状況を確認し、フローアップしていくことになるのです。